本記事と同じ内容を2020年市政報告Web配信テーマ④大東温泉シートピアでまとめていますので、動画が良い方はコチラをご覧ください。20分と長い動画ですが、、、ご了承ください。
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現在、掛川市の行財政改革における最重要課題は
『公共施設マネジメント』
です。
その中でも、個別の施設として最も大きな課題になっているのが、
『大東温泉シートピア』(正式名称 健康ふれあい館)
です。
大東温泉シートピアは、近年の財政支出(市の負担、赤字)が
年間約1億円
となっていて、今すぐにでも見直さなければならない施設となっています。
今回は、大東温泉シートピアについて、現状や課題、今後、そして嶺岡の考えについて詳しく説明していきたいと思います。
大東温泉シートピアの経過
主な経過
平成10年9月 オープン(建設費約12億3千万円)
平成17年4月 掛川市・大東町・大須賀町合併
平成20年 料金改定(大人950円⇨510円 子ども500円⇨250円)
同年 うたたね処設置(約1億3千万円のリニューアル工事 )
平成28年 指定管理者変更
令和元年度 プール休止
現在に至る
指定管理者(👈市がお金を払って運営してもらう会社)
平成10年~16年 財団法人 大東振興公社
平成17年~27年 公益財団法人 掛川市生涯学習振興公社
平成28年~ 株式会社ユアーズ静岡
指定管理料(👈市が運営会社に払うお金)
~平成27年 年間約6,500万円
平成28年~ 年間約2,700万円
借地料
地元地区への借地料 年間1,100万円
市が公表しているシートピアの施設カルテはこちらです。⇨⇨PDFファイル
大東温泉シートピアの現状
次に、現状についてこれまでのデータを交えながらみていきたいと思います。
入館者数の推移
入館者数の推移ですが、2年目の平成11年は、オープン記念みたいなものなので無視をしたとして、平成24年までは、概ね年間24万人程度で推移していました。
その後、レジオネラ菌検出の影響等から入館者数は年々下がっている状況です。昨年からはプールの休止やコロナによる休業などもあり、一概に比較できないため掲載はしていません。
このグラフだけでみると、年間1億円の赤字は、平成28年以降の入館者数の減が原因とみられがちですが、実はそうではなく、建物の老朽化による修繕費の増が重くのしかかってきています。
年間修繕費の推移
では、修繕費の推移をみてみたいと思います。
平成20年は、大規模リニューアルがあったため、高額になっていますが、平成25年以降老朽化が顕著になり、年間の修繕費が2,000万円を超え、平成29年には1億2千万円となっています。
この金額については、修繕において満足のできる金額を確保しているとは言えず、なんとかギリギリ運営できる程度の修繕と言えます。
満足のいく修繕には、今後10年で年間1億円近い修繕費が必要とされる試算がされています。
修繕をしたとしても、立地条件から潮風の影響も強く、その後も永続的に多くの修繕費が必要となることが予測されます。
年間の財政支出
次に、年間の市からの財政支出(市の負担)をみてみたいと思います。
上のグラフは、
指定管理料 + 修繕費 + 借地料 + その他
となります。運営に対して市が補填している合計金額です。
グラフを見ての通り、年々財政支出が増えていることがわかります。
平成25年以降は毎年1億円前後の支出がされています。公共施設ですので、利益を追求している施設ではないため、図書館や福祉施設と同様、赤字が必ずしも悪いというわけではありませんが、非常に大きな支出をしていると言えます。
来館者数減 ⇨ 赤字の主な原因ではない!
実は、市にとって来館者数が減っても、増えても基本的に市の財政支出は変わりません。
これは、指定管理制度において、利用料金制をとっているためで、
前述のとおり、平成27年までは、振興公社に年間約6,500万円、平成28年以降は株式会社ユアーズに年間約2,700万円を支払っていて、運営上の収支については、掛川市は関与しないことになっています。
そのため、入館者数が増えて利益がでれば指定管理者の儲け、入館者数が減って赤字となれば指定管理者の負担となります。
ただし、入館者が多く、利益が出るような施設なれば、指定管理料をもっと安く(若しくは支払わず)運営してくれる企業が出てきて市の財政支出も減ることになります。
これに対して、一定以上の修繕費や借地料は、市が負担することになっているため、その費用が大きな負担となっているのです。
大東町時代の象徴的公共施設
大東温泉シートピアは、平成3年に調査を始めてからオープンまで7年をかけ建設された、大東町時代の象徴的建物と言えます。
その目的は
地域産業の振興並びに町(市)民の健康増進及び福祉の向上を図る
です。(大東町健康ふれあい館条例第1条主旨より)
大東区域の観光資源と言えば高天神城跡や潮騒橋になりますが、大東温泉シートピアのように年間10万人以上の人を集める観光施設は他にはなく、掛川市内でも掛川城と並びトップクラスの集客力を誇る施設です。
現在、市は『海岸線地域振興ビジョン』を策定中ですが、最も集客力があり南部の地域振興における最重要施設とも言えるのが大東温泉シートピアです。
地域振興と健康増進、福祉の向上という設置目的、建てられた経緯、南部地域における重要性、費用対効果等に鑑みながら、将来にとって最も良い施策となるように考えていく必要があります。
環境産業委員会による調査
これらの状況から、私が副委員長を務める環境産業委員会で令和元年度の年間テーマとして、大東温泉シートピアを取り上げ、市外、県外の施設の調査などを行いました。
調査した市外・県外施設
・和の湯(袋井市 民間経営)
・さがら子生れ温泉会館(牧之原市 公営指定管理)
・川根温泉ふれあいの泉(島田市 公営指定管理)
・O-PARKおごせ(埼玉県越生町 公営指定管理)
特に、O-PARKおごせは、シートピアと境遇が似ていて、町が莫大な敷地に建てた温浴施設について、経営が行き詰まり、町として売却を検討していたところ、地元埼玉県の企業である株式会社温泉道場が20年間の長期建物賃貸借という形で、経営を引き継ぎ、見事復活させた事例です。
温浴施設とキャンプ場を融合させて、コロナ禍の中でさらに需要は高まっています。
調査によってわかったこと
・指定管理料を市が払っているところはなく、むしろ指定管理者が修繕費を積み立てている。
・指定管理期間を10年や20年の長期とすることで、民間の独自投資を見込むことができる。
・温泉事業は、一時に比べてライバル業者が増え、どこの施設も老朽化が進んでいることからも厳しい運営状況になっている。
・シートピアは、運営や手法を考え直せば、再建できる可能性は十分にある。
など
市議会からの提言
環境産業委員会の調査から、市議会としてシートピアについて以下のとおり当局へ提言しました。
・温浴事業専門業者へ調査を依頼して、継続の可否、廃止等を早急に判断し、現指定管理期間の満了(令和3年4月)までに結論を出すこと。
・民間活力を最大限に活かすことができるように、長期建物賃貸借契約などの条件整備を行うこと。
・借地について、所有者と協議し、方針を示すこと。
・南部地域の地域振興・観光交流をより推進するため、周辺施設などを含めた一体管理ができる計画を策定すること。
・アウトドアやキャンプ需要などに対応するため、民間事業者と連携し、魅力ある滞在型施設となるよう調査研究すること。
など
強制力があるわけではありませんが、市に対して、市議会としての考えを示しています。
掛川市が示す今後の方向性
市議会からの提言を踏まえながら、市当局として方針を決定し、令和2年9月4日に第1回の大浜地区住民を対象にした地元説明会が開催されました。
その中で示された主な内容が、
①令和2年10月より民間譲渡活動を開始し、令和3年度中の譲渡先決定を目指す。
②指定管理期間満了後の令和3年度以降は、譲渡先との調整が完了するまでは『営業休止』
です。
他地域の参考事例
また、民間譲渡先を探すにあたって、以下のような事例を掛川市は示しています。
竜洋海洋公園オートキャンプ場
竜洋にある、海岸線沿いのキャンプ場です。
磐田市が整備したコテージなどがあり、休日はなかなか予約が取れない施設となっています。
お風呂は温泉ではないため、シートピアの方が優位性はあるとも言えます。
リバーポートパーク美濃加茂
「のんびり過ごす」「楽しむ」「癒される」と言った公園本来の機能に加え、 レジャーとフィットネスをテーマとし、川、森という環境を活かしながら「自然と寄り添うライフスタイル」を提案。(公式HPより)
アクアイグニス(三重県菰野町)
体験農園と温泉施設を組み合わせた総合リラクゼーション施設として紹介。
市の方針(嶺岡の主観含む)
民間譲渡先を探すにあたって、市としてまずは、
借地料を含め、そのままもらってくれる企業を探す
方針を示しています。
その後、民間企業のヒアリングを通しながら、借地料や修繕費などの条件整理をして民間企業を探すとのことです。
6月議会の補正で300万円ほどのシートピアに対する調査費を付けていますが、その費用については、民間企業の意向を確認しながら、地盤調査などに使っていくとのことです。
議会からは、まずは温浴専門業者にシートピアの調査を行ってもらい、その結果如何でその後の方向性を決めるように提言をしましたが、当局としては、まずは民間企業を探すことからスタートするとしています。
議会の提言とは違い、本当にそれで譲渡先が見つかり最善の策となっているのか非常に心配しているところですが、まずは当局の説明を信じて、注視していきたいと思います。
民間企業が見つからなかった場合
地元説明会でも、
・民間企業は見つかる可能性は低い、廃止前提に進めているのでないか。
・譲渡先が見つからなければ、市が運営してほしい。
など、民間企業が見つからなかった場合どうするかという意見が多く出ました。
しかし、市としては、民間企業が出なかった場合の想定はまだしていません。
正直これは、致し方がないと私は思っています。
最終的に見つからなかった場合は、市費を投入した建替えも含めた検討も必要になると思います。
もしそうなれば、再度様々な検証、議論が必要になりますが、
まずは市当局には、全力で民間企業を探す努力をするようしっかりと取り組んでもらいたいと思います。
どこも厳しい公営温泉事業
公営の温泉事業は、どこの自治体も大変きびしい状況にあり、多くの自治体で譲渡や廃止などが検討されています。
岩手県西和賀町では、こんなニュースも報道されています。
秋田県横手市でも、公営温泉の民間譲渡を進めていますが、コロナも影響し、2年程度で市へ返還ということも起きているような状況です。
民間企業がもらってくれない場合やもらったとしてもすぐに運営に行き詰まった場合など、様々な全国の事例も参考にしながらしっかりとした調査・研究が必要となります。
嶺岡の考え
大東温泉シートピアの現状と市の今後の方針について、ご理解いただけたでしょうか?
では、最後に私の考えをまとめたいと思います。
現状の運営の是非について
年間1億円をかけている現状の運営を継続することは、健康福祉の目的を踏まえても、私としては認めることができません。
年間1億円とは、旧大東町民2万人で割るとすると、一人5,000円になります。旧大東町民の半分以上が一人5,000円を払ってでもそのまま運営を継続してほしいと考えているならば継続するべきだと考えますが、多くの住民がそこまでしての継続は望んでいないと判断しています。
現状の継続ではなく、民間活力がより導入でき、市の負担を減らしながら継続的な運営ができるように条件整理をする必要があります。
民間企業が運営するメリットは?
では、なぜ、公共でうまくいかないものが、民間で運営すれば利益が出るのでしょうか?
その主な要因としては以下のことがあげられます。
①スピード感があり、利益追求の投資ができる。
②独自のルートを持っていて安価に工事や仕入れができる。
③経営における多くのノウハウを持っている。
④長期的な民間資本の投資をより多く見込むことができる。
行政が行うと、どうしても手続きに時間がかかり、スピード感が落ちます。また、入札制度は良い部分もありますが、地元企業への発注など様々なしがらみもあり、工事費についても高額になりがちです。
そして、最も大きなメリットとして、民間資本をより多く見込むことができることが言えます。
投資の例として、キャンプ場やトレーラーハウス、コテージなどの宿泊施設やサーフィンなどのマリーンスポーツの活用など、市では投資できなかった長期的な収益を考えた事業が期待できます。
民間譲渡に対するデメリットは?
民間譲渡は、市としては身軽になりますが、民間企業がもしも途中で運営が行き詰まり廃墟になってしまう可能性が残されてしまいます。
横手市のように、運営途中で経営が行き詰まり、返還ということもあり得ます。
地域振興や健康増進の目的を達成するためにも、民間活力を最大限に活用しながら、経営の邪魔をしてはいけませんが、市も継続に係っていく必要があると思います。
民間譲渡の際に、しっかりとした条件整理を行うことで、懸案事項の解消はできますが、そもそも民間企業にとっても解体費など民間譲渡は大きなリスクにもなると言えます。
そのような理由から、私は、民間譲渡よりも20年間の指定管理期間で運営してもらうべきだと思っていますが、市の譲渡方針をしっかりと注視していきたいと思います。
20年間の期間ならば、企業にとっても投資した分の十分な回収機関がありより、民間資金の投入が見込めると言えます。
事業を成功させる最重要ポイント
最も重要なポイントは、
地元住民の協力
だと考えています。
事業を継続する際に大きな障壁になっているのが、年間1,100万円の借地料です。
平成10年の建設時にはほとんど考えていなかった津波や原発のリスクも含めて、年間1,100万円を払って運営してくれる民間企業はほとんどいないと考えられます。
地元住民の方々が、南部の地域振興のことをどのように考え、協力して頂けれるかどうかに、事業の成否は大きく左右されると言えるのではないかと考えています。
地域資源の活用と宿泊施設の設置
現状の運営を続けるだけでは、絶対に運営はうまくいきません。
成功させるには、スポーツ施設や防潮堤、潮騒橋などの地域資源を活用し、施設としてもグランピングなどの宿泊施設の設置は必須と言えます。
そのためには、民間資本の投入が必要で、魅力ある投資になるように条件整理を行うのは市の仕事です。
また、地域資源を活かすために地元住民と一緒になって地域を考えるような組織づくりも重要になると考えます。
最後に
私は、大東温泉シートピアの問題を調査する前は、正直廃止するしかないのではと思っていました。しかし、調査を重ねるにつれて、手法によっては十分可能性があることがわかりました。
そのためには、多くのハードルはありますが、しっかりと条件整理をして様々な検証を行っていく必要があります。
大東温泉シートピアが、地域産業の振興と健康増進の目的を踏まえながら、南部の地域振興の核となる施設として、持続可能な運営ができるように私たち議員も市と連携をして進めていきたいと思います。
そして、市が下さした判断が本当に民意を反映した適切なものなのか、しっかりと注視して参ります。